メディアに「踊らされる」ことはあるのか
稲増一憲です。社会心理学を専門にしています。特にメディアと世論の社会心理学ということで、我々が日々接触したり使ったりしているテレビや新聞、それからインターネット、SNSのようなものが、我々が社会問題について持つ意見に対してどのように影響しているのかということを研究しています。
よくメディアの情報に「踊らされる」という風に言いますけども、どちらかというと、何もないところに新しい考えを植えつけるとか、メディアはそういうことはできない。特に社会問題についてはできないと言われています。むしろ自分がもともと持っている意見を強化する方向、こちらの方が偽の情報ですとか、そういったものに踊らされやすいと考えられます。
例えば、オリンピックを中止してほしいと思っている人は、オリンピックを中止する根拠になりうる都合のいい情報に、逆にオリンピックを有観客で開催して欲しいと思っている人は、観客を入れるのに都合のいい情報に流されやすい。つまり、自分がもともと持っている意見に沿う形の情報には、我々は騙されやすいというふうに考えられます。