私たちは、社会学を日常生活におけるふとした疑問や興味・関心から繋げることができる大変身近な学問だと考えています。
そうした疑問のひとつとして、「なぜ最近若者の間でひと昔前のものが流行っているのだろうか?」といった“リバイバルブーム”について取り上げたいと思います。
そこでこの記事では、メディアやコンテンツをめぐる歴史学/社会学/文化研究を主なテーマとして研究をされている難波功士教授にインタビューを行いました。
記事作成:鬼頭、宮越(社会学部3年)、石躍、由藤(社会学部2年)
メディア・コミュニケーション学専攻分野
メディア・コミュニケーション学専攻分野
私たちは、社会学を日常生活におけるふとした疑問や興味・関心から繋げることができる大変身近な学問だと考えています。
そうした疑問のひとつとして、「なぜ最近若者の間でひと昔前のものが流行っているのだろうか?」といった“リバイバルブーム”について取り上げたいと思います。
そこでこの記事では、メディアやコンテンツをめぐる歴史学/社会学/文化研究を主なテーマとして研究をされている難波功士教授にインタビューを行いました。
記事作成:鬼頭、宮越(社会学部3年)、石躍、由藤(社会学部2年)
大学時代、一足遅れて4年生の9月から就職活動をはじめ、拾ってくれたのが広告代理店であったのでそこに就職しようと決めました。高校の教員として働ける場所もあったのですが、東京に行く良い機会でもあったし、やってみて嫌な仕事だと分かったら、再び教員採用試験を受け直そうと考えていました。
実際には、広告代理店の仕事それ自体は面白いと感じて続けていました。けれども、何年か続けるうちに人と関わることやチームプレイでものを作っていくという作業も自分には向いていないと感じて、会社を休職して29歳の時に大学院に入り直しました。そこでたまたま社会学の中でマスコミを主に研究しているコースがあり、社会人枠として入れるということだったので会社に籍を置きながら2年間貯金を食い潰すという生活をそこで始めました。2年間続けるうちに、広告代理店で働くよりもマスコミ関連を研究することの方が自分の性には絶対あっていると感じたのですが、すぐにはこれで食べて行けるはずもないと分かっていたので、31歳の時に再び会社に戻り、3年間仕方ないという気持ちで仕事をしていた時期がありました。
そして、その3年間が過ぎたあたりで、関学に空きがあるから応募を出して見ないかと声をかけてくれた人がいて、当時メディア系の教員の需要があり、自分には実務経験もあったので、拾ってもらえるということで関学の教員になりました。なので、強い意志があって大学教員(研究者)になったというわけではなく、どうせ働かないといけないならば自分の性に合っていて楽しめる部分が多い仕事をした方がいいと考え、この仕事を選びました。
現在では難波先生は6つの専攻分野のうち、メディア・コミュニケーション学専攻を担当されています。社会学部では2年生の秋学期からゼミ活動(研究演習)が始まります。
では、先生のゼミではどのような活動を行っているのでしょうか。お話を伺ってみました。
大学2年生のゼミでは、自分が気になった CM とかWebに上がっている広告のための動画でもいいんですけど、何かを持ってきて自己紹介ぐらいの感じで話してもらってます。自分のベストCMみたいなのをみんなで言い合うみたいな会です。余談ですが、関学に着任し、ゼミを持ち始めた頃(1990年代)の若い子たちは、ちょっと前の日本のものを全部否定してて、社会派ネタみたいな海外の CM などを持ってきてたんです。でも、今の大学2年生は、ちょっと古い CM とか、レトロスペクティブというか、レトロっぽいもの〈カロリーメイト(満島ひかりが米米CLUBの浪漫飛行とか中島みゆきのファイトを歌っている)CMなど〉を引っ張ってきているので、面白いなと思っています。
フィルムカメラやカセットテープのような“リバイバルブーム”が最近きているのは、社会全体がノスタルジーに振れているというのが前提としてあります。年代が上の人々にとっては、その時代に対する「回顧」みたいなもので、若い人にとって見れば、「そんな時代があったのか」という意味合いで、過去を振り返る傾向が強いのでしょう。
“リバイバルブーム”がテレビなどのメディアに注目されている理由としては、テレビ視聴者層における高齢者の割合が多くなっているので、若い人たちが自分たちの時代の「もの・こと」に興味があるとか・好きだって言ってくれることに高齢者は喜ぶ=「視聴者が喜ぶネタ」として取り上げられているからだと思います。加えて、取り上げられたものを見た若い人たちが「こんなものがあるのか」と感じることも含まれているでしょうね。
でも、本当にあの時代(ノスタルジーを感じる時代)に戻りたいかと言われれば、たぶん若い人も戻りたいわけじゃなくて、その部分のいいとこ取りをしたいんだと思います。
例えば、1960年代の高度経済成長期は「輝いていた時代」という風にイメージされるかもしれませんけど、私が小学校低学年の頃のイメージでいうと、どんどん公害がひどくなっていって、世紀末か、公害に汚染されてこの国は全部ダメになるみたいなのが、割とリアルに語られていました。また、海外のリアリティーショーとかで、今の若者たちをいきなり1970年代と同じような暮らしをさせてみる企画があって、大体みんな「携帯が無い」やら「なんでこんなつまらない世の中なんだ」とブツブツと文句を言っています。
だから、実際あの時代に戻ったらみんな嫌だと思うんですけど、でも現代社会ではそういうところの面白いコンテンツとかいいものだけが見れるし、リバイバルなものにアクセスしやすいアーカイブ化された環境にあるので、社会全体が過去に振れているのはそれなりに説得力があるし、これから社会が向かうべきものは、過去から何を掘ってくるのかっていう話にどんどんなっていくのではないかと思います。
YouTubeなどの動画共有サイトまで含めて考えていくと、「リバイバルやレトロのものが好き、ノスタルジックなものが好き」というのは、“SNS”によって作られたというより、レトロな・ノスタルジックな場所で撮った写真が「映えるもの」として認識され、どんどん加速していく側面があると思います。
“リバイバルブーム”の流行における最初の出発点は、‟SNS”とは関係ないところで実は始まっていて、もっと社会全体が過去を向いている中で、ちょっと振り返って「映える」みたいな話になり、それを加速させるのが“SNS”の役割だと考えています。例えば、Instagramによって、過去のものに触れる・知る・見るという機会が増えましたが、もともとレトロ・ノスタルジックなものを投稿しようと思うようになるのは、社会全体が過去を振り返っているからという動機に繋がるのではないでしょうか。
だからこそ、昨今における“リバイバルブーム”の流行というものは、‟SNS”がきっかけというより、社会全体が過去を振り返っているからだと思います。そんな“リバイバルブーム”と“SNS”の関係性というのは、影響を広める・強めるなどの最終的なひと押しだと思います。
私が18歳の時に思っていた仕事とは全然違う人生を生きてきているので、高校生で将来のことまで考えて学校を選ぶというのは難しいと思います。
私のように18歳のころに考えていたことがその後の人生に全然つながらないこともありうるし、あまり根詰めて考えすぎないほうがいいと思いますね。なので、ちょっとでも面白いなと思ったのであれば、その直感を信じたほうがいいと思いますよ。就職に関してもそうなんですけど、入社する前からその会社のこと全てが分かるわけでもないですし……なんかちょっとでもいい会社だなと思えたり、一緒に働けるんじゃないかなと思えたりするのであれば、その直感というのを信じたほうがいいと思います。なので、高校生のみなさんには、一生懸命進路について考えてほしいとは言いつつも、ちょっとでも面白そうとかなんかできそうといった直感は信じたほうがいいと思うんですよね。
あまり悩みすぎず、自分がやりたいと思ったその直感を信じて学校を選んでみてください。
最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。学部選びって本当に難しいですよね。ただ、難波先生のおっしゃられていたように直感を信じてみるというのは、大事だと思います。この記事を読んで少しでも社会学が面白そうだと感じたのであれば、ぜひ社会学部を候補の1つに入れてみてください。この記事がみなさんの学部選びの参考になれば幸いです。高校生の皆さん頑張ってください!!応援しています!!