関西学院大学の魅力に迫る
――関西学院大学社会学部の良さは何ですか。
関学の社会学部の1番の特徴は、受験の段階で学科が分かれていないところです。社会学を学んでいない人に「社会学とは何か」を伝えることは非常に難しいです。高校で学ぶ社会科に当てはまらない一般的なところを掘り下げるのが社会学や心理学です。それを1年半かけて追求する中で自分に合った専攻分野を決められるのは良いことだなって思います。
――社会心理学にはいくつかのゼミがありますが、それらの違いは何ですか。
先生方にはそれぞれ得意分野があります。たとえばメディアや環境問題など。私は親密な対人関係を専門としているので、ゼミには親密な対人関係に興味がある子が多いです。自分の印象をどのように良く見せるのか、どのように見られているのかをテーマに挙げ、卒論を書くために実験している学生さんもいます。基本的に卒論のテーマは自由なので、他の専攻分野と同じテーマもあります。ただ、 “切り込み方が心理学”という感じです。
――心理学で行われる実験には数学的要素も含まれていますか?
心理学では、また社会学でも、科学的に数値データ(統計学)を使って分析することが1つのアイデンティティになっています。なので、実験を行うための調査票を1から自分たちで作成して、データを収集し、分析するという流れです。忙しいけれど、その分大学生っぽく勉強できますよ。
――文学部にも心理学はありますが、社会学部の心理学と何が違うのですか?
文学部の心理学はどちらかというと、個人や個体といった生物としての人間に注目します。だから、「心ってなに?」って言われたら、脳から考えようとします。文学部で学ぶ心理学は生物学に近いので、動物を実験の対象にします。一方、社会心理は社会学のルーツというものがあるので、人が創りあげた社会が人の心にどんな影響を与えているのかに注目します。なので、人間を対象に実験を行います。
――最後に社会学を通じて得られるものは何だとお考えでしょうか?
実は僕、社会学ってよく分からなくて。一応社会学部出身ではあるんだけど、社会学がわからないから心理学やっているみたいなところもありまして。高校生も同じで、社会学と聞いて何の役に立つのかピンときていない人が多いと思います。データサイエンスのより実学的な学問と比べて、人文系が何の役に立つのか。それは、多面的なものの見方がつくというのもあって、想像力が身につく。簡単に言えば、社会学を学んだ人は“やさしく”なれるのだと思います。
――やさしくなれるとは?
多くの人はマジョリティーの立場にいて、マジョリティーの足を引っ張る人を排除する風潮の社会のなかで、社会学部で学ぶとマイノリティーの存在に気づけます。さらに、その状況をどうにか良くできないか真面目に考えている人の存在にも気がつくことができると思うのです。だから、人に優しくなれるというよりは”みんなに”やさしくなれるのです。
――そのような社会学部の良さはどうすれば社会学の楽しさを知らない人にも伝わると思いますか?
やはり社会学部で学んで初めて実感できることはありまして。それは、もう見え方が変わってしまっているので、見え方が変わる前の高校生に社会学の良さを説明してもなかなか伝わらなくて。ここが歯がゆいところだとすごく思います。しかし、社会全体として、社会学部で身につく多面性も求められていて。実は企業もいろんな人を採用すれば、人材が豊かになれるという考え方を持っています。その考えをみんなが持つことができるのが重要で、それを伝えていけるっていうのが社会学部の大事なことだなと思います。